パンデミックにおける新たなチャレンジ!交流を深め方向性を模索するライブハウスのあり方とは?
こんにちは。本日もおつかれさまです。
これから年末へかけてのホリデーシーズンを迎えますが、EarPeaceは、インディーズ系のライブ会場を引き続きサポートしていきたいと願っています。
今日は、世界でもトップクラスのミュージックハウスの一つとされる、ミシガン州アナーバーにあるアーク(The Ark)のマーケティングディレクター、バーブ・シェイファー・オーティア(Barb Chaffer Autheir)へのインタビューをご紹介します。
EarPeace:アークとはどのような経緯で関わることになりましたが?
バーブ:80年代にミシガン大学の学生だった私は、アークに親しみを覚え、1988年に初めてそこでのショーに参加しました。
1999年にアナーバーに戻ってきた時、アークが非営利団体だったことを思い出し懐かしくなりました。 アークで演奏したアーティストを何人か知っていましたし、コミュニティに参加する機会を探していたので、同じ年の秋にボランティアに登録しました。
EarPeace:アークは、60年代に始まる素晴らしい歴史を持ち、現在も繁栄し続けています。情熱をこれほどの長きに渡り持続、実現させている要因は何だと思いますか?
バーブ:アークが設立されてから50年以上経った今でも、設立に尽力した人たちが関わっていて、後から来た私たちにその歴史や使命を伝えてくれています。
1970年代は、全米のほとんどのフォークライブハウスが衰退していた時期でした。 自分たちのミッションと、コミュニティ組織であるということを突き詰めて考えた結果が、長寿を可能にしたのだと思います。
人々はアークのショーに参加するだけではなく、最初からコミュニティの一員であると感じていたのです。
EarPeace:アークのようなアイコニックな会場にはまるで魔法がかかっているように思えますが、アークのマジックとは何でしょうか?
バーブ:ジェフ・ダニエルズは、「アークでは、音楽は壁の中にある」と言いました。 ショーを体験すると、会場の56年の歴史全体を感じることができて感動します。
アークの客席にいると、演奏者と一緒にコミュニティに参加しているような感覚に包まれ、音楽を中心に据えた会話のようなものなのです。
EarPeace: 60年代と同じように、今の若い世代も同様に、アークのビジョン「人間の精神を豊かにする」ことを求めているように感じます。若い世代にとって、アークはどのような役割を果たしていると思いますか?
バーブ:これは私たちにとって大きな課題でした。というのも、チケットを購入してくれる中心となるお客様は年々高齢化しているからです。
しかし、フォークミュージックに込められたメッセージや、人々に感動を与えて一体化させる音楽の力を、若い世代も同じように求めていることを知っています。
60年代以降のフォークミュージックには、プロテストミュージック(政治的抗議のメッセージを含む楽曲)が含まれていますが、歴史の中でこれほどまでに抗議を行い、変化を起こすことが必要とされた時代はあったでしょうか?
ここ数年の目標のひとつは、学齢期の子どもたちを対象とした教育的なプログラムを充実させることでした。
最も成功したのは、コモンコード(Common Chords)というプログラムで、アメリカ音楽の歴史や、その中での文化的な多様性やつながりについて、学校の子どもたちに向けて話しています。
EarPeace:COVIDは、あらゆる場所のライブハウスやインディーズ系施設に大きな影響を与えました。この2年間をどのように過ごされましたか?
バーブ:当面の目標は、オーディエンスとのつながりをキープすることでした。そこですぐライブストリームに目を向け、アーティストのライブストリームへの取り組みを共有し、アークのフォロワーをイベントに誘導、音楽をサポートするよう促しました。
その後すぐに、アークファミリールームサービス(Ark Family Room Series)を作成しました。利益を上げることやライブの代わりになることを期待したのではありませんが、アークのアーティストをサポートし続け、オーディエンスとつながるためのプラットフォームとなりました。
ここでのショーは、すべてチップジャーモデル(リスナーが金額を選択し支払う)で運営され、75回のパフォーマンスの間に6000ドル(約68万5000円)以上の収益を得、大部分がアーティストの懐に入りました。
非営利団体として幸運だったのは、すでに資金調達能力があって、非常に協力的な寄付者がいたことです。営利目的の会場を運営しているほとんどの友人たちのには、最初からはこのような寄付者がいませんでした。
そういったメンバーからの支援に加え、連邦政府や州政府に働きかけ、最終的にインディーズ系会場への資金援助を勝ち取ったことで、音楽をライブで紹介する活動を再開するための道筋ができたのです。
観客がこれまでの規模の動員数に戻るまでには、パンデミック後さらに何ヶ月もかかるだろうと認識しています。
また、業界全体の賛同を得、協力し合って再建するクリエイティブな方法を生み出したり、ライブストリーミング導入方法を考える必要があると思います。けれども、やはり直接お客様を目の前にして音楽を紹介することに主眼を置いてもいます。
EarPeace:アメリカンフォークミュージックには、常にアフリカ系アメリカ人が含まれていますが、白人の音楽カルチャーがそのことを真に理解するには時間がかかったと思います。会場では、業界をより公平なものにするためにどのような取り組みをしていますか?
バーブ:すべての文化やコミュニティには、フォークミュージック(元は民謡などの民俗音楽、そこから派生したポップミュージックを含む)があります。フォークミュージックのコアにあるのは、すべての人々の音楽だということです。
けれどもおっしゃるとおり、街行く人々にフォークミュージックとは何かと聞くと、年配の方々や白人を中心とした非常に狭い定義を思い浮かべるのではないでしょうか。
特に最近では、フォークミュージックの定義を広げようと努力しています。 私たちが紹介する音楽を「アーク・ミュージック」と呼ぶこともあります。収益性や商業性がなくとも、自分たちの使命に基づきプログラムを組んでいるので、いつでもぜひとも聞いて欲しいアーティストをブッキングすることができます。
こうして、有色人種のアーティストの音楽を紹介するようになりましたが、実際には、オーディエンスは依然として白人が多いという事実があります。
そのため、現在は有色人種のコミュニティと提携して共同プログラムを実施したり、長年成功してきた白人主体の組織力やリソースを共有する方法に焦点を当てています。
また、アンプリファイ・フェローシップ(Amplify Fellowship)のようなプログラムに場所や技術的なサポートを提供したり、有色人種のコミュニティを主な対象とする芸術団体と積極的に連携しています。そうして彼らが何を求めているのかを聞いて学びつつ、望むプログラムを提供するよう努めています。
EarPeace:アークでの滞在中パフォーマンスをした中で、お気に入りのアーティストは誰ですか?
バーブ:これは一番難しい質問ですね。 アークでは本当に素晴らしいショーを見てきました。1999年頃にアークで初めてパティ・グリフィンを見たときは、すっかり変えられてしまいました。私の心を掴んで離さなかったのは、思えばあの公演だったかもしれません。
でも、アーティストと一緒に互いをバックアップしながら行うショーは、実際に観客として楽しむ私にとって、すべて本当に魔法のようなショーなのです!
以上です。フォークミュージックの定義を広げ、模索しつつ人種の壁を超えて協力するきっかけとして、困難はありつつも、ある意味パンデミックは一役かっていると言えるのかもしれませんね。
困難を乗り越えながら、世界的により素晴らしい音楽シーンに変貌していくよう心から願っています。
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