シルクロード、カルドゥン・ラ峠を越えて〜親切な地元の人たちとの出会い
こんにちは。本日もおつかれさまです。
通常なかなか足を踏み入れることのない、遥かな大地を駆け抜ける旅シリーズ第2回です。
第1回「インド、カシミールの絶景グレスバレーをバイクで旅する!ライディング体験記」はこちらです。
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前回のハンレへのライドを終えると、今度はヌブラ渓谷を目指して北上します。
ラダックの最北端に位置するこの谷を、2016年にも訪れたことがあります。ヌブラ川とシヨク川沿いにある最後の集落を抜けて、フンダル砂丘を再訪したいと思ったのです。
ヌブラ渓谷は、レーから約150km離れていて、もとは「花の谷」を意味する「ルドゥムラ」と呼ばれていました。雪を被ったヒマラヤ山脈に囲まれ、北はパキスタンのバルティスタンと中国のトルキスタン、東は中国のアクサイチン高原とチベット、そしてカシミール地方に挟まれた場所に位置しています。
ヌブラ渓谷は、その風光明媚な景色もさることながら、古くは中央アジアとの交易路、シルクロードの重要な中継地でした。
初日は、レーから旅をスタートしました。レーからヌブラ渓谷へ向かうには、年間を通してほとんど閉鎖されることのない要衝の峠、カルドゥン・ラ(Khardung La)を経由するのが最も一般的なルートです。
カルドゥン・ラの標高は、5,359m。レーからわずか40kmしか離れていないため、人々は自転車やハイキングで峠を目指すことが多いようです。ラダックへ行くには、必ずカルドゥン・ラを通らなければなりません。
頂上はオートバイで混雑していますが、標高が高いため長居は禁物です。いつもどおりに写真撮影をした後、正午までには峠を越えました。最初に立ち寄った小さな村、ノース・プルでコーヒーを飲みながら二人の地元の人たちと話し、ヌブラ渓谷について色々と教えてもらいました。
彼らはパナミックという村に住んでいて、しきりにその村を訪れるよう勧められました。そんなふうにして、数多くの村が存在し、有名なパナミック温泉や、シアチェン氷河にインド軍ベースキャンプもあるヌブラ渓谷へと向かいました。
道中は地形が美しく、整備の行き届いた曲がりくねった道を楽しむことができます。
カルドゥン村には、世界最高峰のウルトラマラソンの一つ、「La Ultra THE HIGH」のスタート地点があります。
午後二時にカルサル村に到着、そこにはトゥルトゥクとワルシに向かう分かれ道があります。初めてヌブラを訪れたとき、パンク修理の店が一軒だけありました。人里離れたこの場所で、店主はたった一人で店を切り盛りしていました。
とても親切な彼は、前回訪れたときにも助けてくれたので、まだこの店があるかどうか確認しようと行ってみることにしました。店主はその名を 「ケヴァル(Keval)」 といい、英語だと「alone / only (たった一人)」という意味なのが面白いと思いました。お店はまだあって、お茶をいただきながら少し話をした後、ワルシに向かって旅を続けました。
"強さとは体力でなはく不屈の精神に由来する”
ヌブラ川沿いを走るのはとても快適でした。ラダックの至る所にウィットに富んだ「スピード出し過ぎ注意」の看板が掲げられていて、実に楽しい気持ちになります。
小さな村が次々と現れ、数少ない観光客たちはみなシヨク川沿いの谷へと向かっていきます。
パナミックをあっという間に通り過ぎ、ワルシの近くでキャンプをしようと思いました。けれども、そこはほとんど砂漠といっていい場所で、きれいな水を調達できるキャンプ場を探すのは大変です。とある年配の店主に声をかけ、ようやく一晩のキャンプ場所を確保することができました。
ラダックは、変化に富んだ美しい風景もその魅力ですが、温かく非常に親切な地元の人たちもまた非常に魅力的です。
店主は、快く店の隣に泊まる場所を提供してくれました。その小さな土地には木陰があり、柵で囲まれていました。小さな小川も流れていて、きれいな水を飲むことができます。
チャンルンと呼ばれるその村の人口は、たった五家族。店主と旅のことを話したり、小さな村の生活について色々教えてもらったりしました。村にある温泉は、軍が洗濯のために使っているので、厳しい冬のさなかでも全世帯にお湯が無制限供給されるとのことです。
持参した調理用携帯ガスストーブに大いに興味を持った彼に、帰国したら一つ送ると約束しましたが、いまだ果たせずにいます。今思えばそのときに渡してしまえばをよかったのですが、そうでなくとも近いうちに再び訪れることになるでしょう。
午前中は、観光客の立ち入りが許される最後の村、ワルシ村まで走りました。この道は、中国との境界にあるインド軍最前線、シアチェン軍ベースキャンプにも通じています。
ヌブラ渓谷を訪れてから十日後、インド政府は、シアチェンベースキャンプへの立ち入りをすべての観光客に対して許可しました。残念!ぜひともベースキャンプに行ってみたいと思っていた私には、まるでひどいジョークのようです。
チャンルンから戻る途中、有名なパナミック温泉へ行ってみました。硫黄を多く含み、薬効があると言われています。温泉なら以前にもいくつか訪れたことがありますが、ここにはぬるめの温泉と、ものすごく熱い温泉と二つあるところが気に入っています。
そうしてお湯に浸かってすっかりリフレッシュすると、昼食をとり、バイクで谷の反対側へと向いました。
(つづく)
"ヌブラ渓谷への道"